なぜ私は「支援者を支援する」活動を始めたのか

今回は私が「支援者を支援する」活動を始めた理由について書いてみようと思います。
少し長くなるけど、大事な話だから、よかったら読んでください。

津久井やまゆり園の事件が突きつけたもの

一番の大きなきっかけは、2016年の津久井やまゆり園事件でした。
元支援員の男が、障害のある人たちの命を奪った——

そのニュースに触れたとき、言葉にできない衝撃とともに、「もしかしたら、自分も…」という底知れない恐怖が胸を締めつけました。
もちろん、あの事件を肯定するつもりは一切ありません。

でも、彼がああなってしまうまでに抱えていたであろう「思い」や「孤独」を、全く想像できないかと言えば、そうではなかったんです。

「指導」という名の支配と、揺らぎ始めた自分

私が働き始めた当時の現場は、「支援」というより「指導」がまだまだ当たり前に行われていた時代でした。
「社会に合わせられるように」「ちゃんとすることがその人のためになる」——そんな価値観が、支援者の正しさとしてまかり通っていたように思います。

私自身も、無意識のうちにその価値観に染まっていました。
だから、厳しく接したこともあるし、「甘やかしてはいけない」と思い込んでいたこともある。
だけど、心のどこかで「これで本当に良いんだろうか?」という小さな疑問が、ずっとくすぶっていたんです。

音楽部活動から見えてきた“ほんとうの関わり”

少し話は遡りますが、私は入職3年目に音楽部を立ち上げていました。
新人ながら「やりたいです!」と声を上げたら、施設長が面白がって快く背中を押してくれたのです。

やるなら楽しめるようなプログラムを!そんな思いでプロのトレーナーを呼んで、音楽に合わせて体を動かしたり、一年に一度の合唱祭に参加したり、ただその場を一緒に楽しんだり。
そんな活動を15年近く続けながら笑う皆んなの顔を見たとき、「ああ、私はこういう関わりがしたいんだ」って、心から思ったんです。

「支援される/する」の関係性ではなく、ただ同じ場に“ともにいる”ということの大切さに気が付けたのはこの活動があったからだと思います。

喫茶店への異動、そこで聴いた「本音」

入職から14年ほど経った時、私は施設内の喫茶店に異動しました。
ちょうど難病のベーチェット病が落ち着いてきた頃でした。
そこでリーダーを任され、今度は地域の人や、他施設の支援者、保育士や看護師などの対人支援に関わる方や障害者の保護者など、いろんな立場の人とつながるようになりました。

その中で印象的だったのが、あるご近所の常連さんの一言でした。
「障害がある人を支援するって大変でしょ、ほんと偉いよ。自分にはできない」
その言葉に、私はモヤモヤしました。

“支援が大変なわけじゃないんだよな”。
“その前に私そんな立派な人間だったっけ?…”って。

もちろん支援にも大変な場面はあるけれど、心が揺さぶられるような触れ合いはかけがいのないものです。
私はそれによって成長させてもらえていると思っていたんです。

それよりも、現場で感じてきた「しんどさ」や「孤立」を思い出していました。
一番大変なのは「人間関係」。
利用者との関係だけじゃない、同僚や上司との関係、保護者とのすれ違い。
支援への思いがあっても、そこに耐えきれずに潰れてしまう仲間を、私は何人も見てきました。
それに気がつかない、救えない、私だけでは無理だと諦めることも多くありました。

だから私は、支援者を支援したい

そんな中でコロナがやってきて、喫茶店も閉店。
自分の身体のこと、津久井やまゆり園での事件のこと。
これからの仕事のこと。

私は変わるなら「今しかない」と思い、スッパリと退職。
国家資格になったばかりの公認心理師の勉強を始めました。
図書館に通い詰めて、どうにか合格を手にします。

そして今、主に私は支援者を支援する活動をしています。
なぜ支援者支援なのか——

それはかつての私自身が、支援して欲しかったから。
そうしたら救われたと思えたのではないかと思うからです。

「あなたはどう思ってる?」って対等に聞いてくれる誰か。
「間違ってもいいよ」って、一緒に悩んでくれる誰か。
そんな存在が一人でもいたら、きっと違っていたと思う。

そして何よりも…

あの事件のような絶望を、二度と生まないために。

「支援者の孤立」をなくすために

支援者が孤立し、頑張りすぎて、自己否定に陥っていくと、必ずどこかに歪みが出ます。
それは、利用者にも、チームにも、そして支援者自身にもよくない。

だから私は、「ちゃんとしなくてもいい場所」「一人じゃないって思える時間」を届けたくて、この活動をしています。
問いを一緒に語れること。
悩めることを、悪いことにしない空気。

それが、支援の場の“豊かさ”につながると私は信じています。

この記事を書いたのは

植竹 美保
団子の焼ける公認心理師
こころ整備士(認定専門公認心理師)の植竹美保です。
たまに団子屋になりながら、支援者支援をメインに活動しています。

もう疲れた、先に進めない、進みたくない。
そんな風に思ったら、私と一緒にこころを整備してみませんか?
少しでも皆さんの心持ちが軽くなるようなお手伝いができればと思っています。
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