「自己肯定感を上げよう」の違和感

最近、自己肯定感という言葉を耳にするたびに、どこか引っかかるような気持ちを感じています。

「自己肯定感って、自分1人で上げるものなの?」って。

SNSや本を見ていると、「自己肯定感を高めよう」「自分で自分を認めよう」っていう言葉が本当にたくさんあって、私自身もそれを信じて努力してきた時期がありました。

でもちょっと違和感を感じてるんです。
頑張って自分を肯定しようとしても、うまくいかないときは「できない自分」がまた出てきて、つらくなる。

「これって、むしろ自己否定につながってない…?」って。

自己肯定感って、本当に“自分で上げる”もの?

もともと「自己肯定感」って、誰かとの関係の中で、
“自分は大切にされている”って感じられる経験から育まれるものだったと思うんです。

特にトラウマケアや愛着の領域では、「安全で信頼できる他者との関係性」があってこそ、
“私はここにいていいんだ”と感じられるようになる。

でも今は、
「自己肯定感は自分で高めるべきもの」
「頑張って自分を好きになろう」
という方向にすり替わってしまっていて、それがかえってプレッシャーになることもあるように思います。
本当は、そう思えない自分をそのまま受け止めてくれる存在との出会いや、誰かに自然と認められる体験があって、少しずつ育っていくものなんじゃないかな。

「自分より下」を見て安心する気持ち

もうひとつ、気になることがあります。

それは、私たちがふと持ってしまう、「自分よりできない人を見ると安心する」感覚。
これは特別な誰かだけの話じゃなくて、日常の中で誰でもふと感じてしまうことがあるんじゃないかなと思います。

「あの人よりはマシかな」って思って、どこかホッとしていることって。

障害のある人に対しても、「かわいそう」「自分より大変そう」と感じる人が多いと思います。
それって、“共生へのまなざし”というよりも、比較によって自分を保とうとする視点、「私の方がマシ」って安心したいんじゃない?って思っちゃう。
どの視点からの比較だよっ!ってツッコミ入れたい感じ。

でもその安心って、
“誰かを下に見たことで得られる、一時的な自信”なんですよね。
それは、自己肯定感ではなくて、比較の中で保たれている“脆い自尊感情”なんだと思います。

いじめの構造も、きっとここにある

学校でのいじめや、SNSでの攻撃的な言動を見ていると、「誰かより上でいたい」という感情が根っこにあるように感じます。
たくさんの“いいね!”をもらえなければ価値がないと思ってしまう構図もそう。

自分が上に立っていることで、「自分の価値がある」と思える。
誰かを下に見ることで、「自分は間違っていない」と感じられる。
でもそれって、“他者を踏み台にして得る安心感”でしかないんですよね。

本当の意味で「自分の存在が価値あるものだ」と思える感覚とは違う

本物の自己肯定感は、つながりの中で育つ

私は思うんです。
自己肯定感って、「誰かより優れているから持てるもの」じゃなくて、
「誰かと違っていても、そこにいていいと思える関係の中で育つもの」なんじゃないかなって。

誰かと比べなくても、自分の存在が認められている。
誰かとつながっていて、そこで頼ってもいいし、頼られてもいい。
そういう体験の中で、少しずつ「いてもいいんだ」「そのままでいいんだ」という感覚が生まれてくる。

それが、本当の自己肯定感なんじゃないかなと思うのです。

その“安心感”、誰かを下にして得ていませんか?

もしも今、
「自分はあの人よりできている」
「自分の方がマシ」
そんなふうに思って安心している自分に気づいたら、それは本当の自己肯定感じゃないかもしれません。

誰かを下に見なくても、
誰かと比べなくても、
自分はそのままで、大切にされていい存在なんだと感じられること。
その感覚を少しずつ育てていくことが、本当に自分を肯定するということなんだと思います。

自己肯定感はきっと、「いてくれてよかった」と誰かに思われた記憶や、何気ない会話の中で、ふと気持ちがゆるんだ経験、自分の話をちゃんと聴いてもらえた時間——

そういうささやかなやりとりの中に、少しずつ少しずつ、育っていくものなのです。

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この記事を書いたのは

植竹 美保
団子の焼ける公認心理師
こころ整備士(認定専門公認心理師)の植竹美保です。
たまに団子屋になりながら、支援者支援をメインに活動しています。

もう疲れた、先に進めない、進みたくない。
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