「なんであの人はわかってくれないんだろう」
「あんな理不尽なことされたのに、なぜ自分だけ苦しんでるんだろう」――。
そんな怒りに何度も囚われたりしていませんか?

外から見ると、私って穏やかに見えるらしいのですが、実は怒りを持ち続けやすいタイプなんです。
相手に知らしめたい、同じ苦しみを味わわせたい。
そんな気持ちで頭がいっぱいになって、ふと気づくとまた同じ怒りを思い返してしまう時がありました。
そうやって怒り続けると、その人のことを何度も思い返したりしませんか?
逆に「好きなんじゃないか?」と思うくらい、私の頭の中に居座り続ける。
なんともおかしな感覚です。
そして、段々とそんな自分に嫌気がさしてきて。
怒りを手放せない自分、許せない自分。
二重にも三重にも苦しみを生む原因になってくる。
「この怒りを持ち続けているのは、無駄だ」と思った時があったんです。
誰しもにある「怒り」の感覚
私たちは日々、いろいろな場面で、
「なんでそんなことするの?」
「どうして私の気持ちを分かってくれないの?」といった怒りや苛立ちを感じます。

それは人間にとって自然な現象であり、必要な感情です。
とはいえ、怒りをずっと抱え続けるのはしんどい。
相手に対する怒りが消えないばかりか、いつの間にか自分自身をも苦しめてしまう。
「相手を許す」ってそんなに簡単じゃないし、私は“6秒我慢”したって消えてくれない。
それでも「怒りを手放す」ことは、実は自分を救うために大切なことだと感じるのです。
怒りは生存本能の一部?心理学の視点から
怒りをまずは肯定的に捉えてみます。
そもそも怒りは「敵や脅威から自分を守る」ために備わった本能的な感情だといわれています。
心理学者チャールズ・D・スペルクマンらの研究(Spelke, 1979)によると、怒りは自己防衛や自己主張に役立つ側面があるそうです。
つまり、怒りそのものが悪いわけではなく、本能的に大切な役割を持っているということ。
けれども、怒りを持ち続けてしまうと、結果的に自分自身を傷つけることにもつながってきますよね。
だから、なんとかこの怒りを鎮めたい。
そう考えると、相手のことを許さないとと思い始めるんです。
でも、その怒りって相手は気がついてる?
そうだ、許さなきゃと思う。
その怒りの矛先は、確かに相手に向いている。
だけど、実際は、その怒りって相手に届いていないことが多いと思いませんか?
例えば、ついこないだの出来事。
私の車の前をふさいで作業するトラックの運転手。
「車を出したいので、どかしてください」となるべく和かに声をかけたんです。
こちらの怒りの感情を抑えてお願いしたのに、無言で嫌な顔をされた瞬間、心にモヤモヤが広がりました。
「腹立つー!!」と車の中で口走る私。
でもきっと、相手はその後も何事もなかったように仕事をしているんですよ。
いや、下手したらあたしに文句を言っているかもしれない。
そんな風に自分だけがずっと怒りを握りしめて、損をしている気分になったんです。
こうした怒りって、相手に直接伝わるどころか、自分の中で大きくなり続けます。
やがて「なんで私だけ…」という被害感情や、自己否定感にまで発展することもあるのです。
なら、どうしたらいいんでしょ。
相手を許すこと?いいえ、自分を赦すこと
「許す」という言葉には「相手の行為を大目に見る」という意味があります。
一方で「赦す」という漢字には、もっと深い意味を持っています。
- 許す:相手の行為を受け入れる、社会的な許容の意味合い。
- 赦す:自分の苦しみや執着を手放し、心を解放する行為。
この違いを知ったとき、私は「怒りを抱えて苦しんでいるのは、許せない相手を許すためではなく、自分を赦すためなんだ」と思ったんです。

「赦す」ことは相手の免罪ではない
心理学者のリチャード・デビッドソンは、怒りの感情を感じる脳の仕組みを指摘しています。
私たちの体にある扁桃体という部分が、怒りや恐怖を引き起こしている(Davidson, 2012)。
そして、それを鎮めるには「自分の感情を自覚すること」や「意識的な切り替え」が有効だと言われています。
怒りの渦中にいるときは、相手に仕返ししたい、自分の苦しみをわかってほしい、と強く思ってしまいます。
でも、それを手放せるかどうかは、自分次第。
相手の態度がどうあれ、自分を赦すことは「相手への免罪ではなく、自分を苦しみから守る行為」であるのです。
赦すことは、諦めや弱さではなく、自分への優しさ
私が感じてきたのは、怒りをずっと抱えたままでいるのはとても苦しいということ。
「赦す」というのは、怒りを持ってしまった自分を責めないことでもあります。
「なんであんなに怒ってしまったんだろう」
「なんで怒りを手放せないんだろう」
そんな風に自分を責めるよりも、
「それだけ必死に生きてきたんだな」
「自分の思いを大事にしてきたんだな」
と、自分の気持ちを赦してあげること。
怒りを手放すための小さなステップ

「怒りを手放す」なんて、理屈ではわかってもなかなかできない。
そんな時に参考になるのが、堀内恭隆さんの著書
『イライラ、さよなら。 不機嫌から卒業するための48のポイント』です。
この本では、日常のイライラや不機嫌さを解消するための具体的なアドバイスが示されています。
例えば、次のような小さな実践が紹介されています。
- 「深呼吸をして、頭の中で“まあいいか”と唱えてみる」
- 「相手をコントロールしようとせず、自分の感情を感じ切る」
- 「視点を変えて、相手の事情を想像してみる」
こうした習慣が、怒りに巻き込まれる自分をそっと助けてくれるかもしれません。
6秒間、自分の怒りに耐えるより、私はこの本のアドバイスが役に立ちました。
ちょっと立ち止まって考えてみませんか?
もし今、あなたの中に許せない誰かがいるのなら――
「相手を許す」ことを急ぐ必要はないと思うんです。
まずは「怒りを抱えたままの自分」を赦し、その怒りを手放してあげること。
怒りを相手にぶつけ続けることは、不可能に近いし、自分の時間やエネルギーを奪うだけ。
相手が変わらなくても、相手を許せなくても、まずは自分を赦すことから始めてみる。
それは、「私はもう、苦しむ必要がない」と自分を苦しみから解放する第一歩。
そんなこと言ってるくせに、私だってうまくできるときとできないときあります。
けれど、少しずつでも自分の心を赦し、無駄な怒りを手放したい。
そう思っています。
皆さんも怒りを手放し、「相手を許す」ではなく「自分を赦す」ということから、少しでも皆さんの心が楽になってくれるたら嬉しいです。
参考書籍
『イライラ、さよなら。 不機嫌から卒業するための48のポイント』(堀内恭隆 著)
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