ふとした瞬間、こんなことってありませんか?
「今日も誰かのために頑張ったけど、帰り道にどっと疲れが出てきた」
「相談に乗ったけど、気づけば自分の方がしんどくなってない?」
「“大丈夫?”と声をかけるばっかりで、誰も私を心配してくれない」
支援やケアの現場にいると、こうした“あるある”に心当たりがある方も多いはずです。
誰かに寄り添うことを選んだ人ほど、相手の痛みや不安に敏感になりやすい。
それが「感情労働」と呼ばれる、支援者ならではの心の動きです。
感情労働――「寄り添う」って、実はエネルギーが要る

支援の現場は、ただ「手伝う」だけじゃなく、相手の気持ちに寄り添い、一緒に悩み、時に悲しみが伴うような場所。
この「感情を使う仕事」は、目に見えないけれど大きなエネルギーを消費します。
たとえば、相手がつらそうなとき、こちらも胸が痛くなる。
「大丈夫」と励ましながら、自分の中にも不安や無力感が広がることもある。
それでも「支援者だから」と感情を抑え、笑顔でいようとする――
これが積み重なると、「共感疲労」や「二次的ストレス」といった形で、心のエネルギーがすり減ってしまうこともあるのです。
支援者自身の心と体をケアすることは、支援を続けるためにも、とても大切なことです。
支援者のセルフケアは“特別”ではなく“必要”
心理学では「セルフケア」は特別なことではなく、誰もが日常でできる“自分を守る技術”とされています。
そっと深呼吸したり、短い休憩をとったり。
誰かに話を聞いてもらうことなども自分を労るセルフケアです。
災害支援や福祉の現場でも、
「自分の体調や心の反応に気づくこと」
「同僚と声をかけ合うこと」
「しっかり休むこと」は、
ストレスをためこまないための基本です。
「罪悪感」や「無力感」を抱いたとき

「罪悪感」や「無力感」を抱くこともあるかと思います。
例えば、人が足りないからと無理にでも出勤したりしてませんか?
「自分だけ休んでいられない」と罪悪感を持ちやすい環境があるかと思います。
でも、あなたが無理をして調子を崩すと、かえって周囲や支援を必要とする人にも影響が及びます。
「自分の限界を知ること」「時には誰かに頼ること」も、支援の大切な一部です。
感情労働の現場では、「怒り」「悲しみ」「無力感」など、マイナスな感情も湧いてきます。
でも、それを「感じちゃいけない」と思う必要はありません。
むしろ、そんな感情を“安全に表現できる場所”を持つことも、心の健康にはとても大切です。
日記に書く、信頼できる人に話すなどは日常の中に取り入れておきたいケアの一つ。
プラス、職場の中で自分の気持ちを自然と話せる雰囲気があれば、もっと最高なんですけどね。
そんな時間もなければ、「今日はちょっと疲れたな」と自分に声をかける――なんていうのもあり。
小さな工夫が、感情のバランスを保つ助けになります。
「なるほど!」と思った、身近なセルフケアのヒント
セルフケアって、特別なことじゃなくていいんです。
私の愛読書でもある伊藤絵美さんの『セルフケアの道具箱』には、日常でできる小さな工夫がたくさん載っています。
- ため息をついてみる(実は“リセット”の合図になるそうです)
- お気に入りの飲み物を一杯、ゆっくり味わう
- 仕事帰りに空を見上げて「今日の雲、なんだか面白いな」と思う
- たまには“支援者”をお休みして、自分の好きなことに没頭する
「こんなことでいいの?」と思うかもしれませんが、小さな“自分のための時間”が、気持ちの余白をつくってくれます。
「全然違う世界」とのつながりも、心の風通しを良くする

また、支援の現場や同じ分野の仲間と話すのも大切ですが、時には“全く関係ない世界”の人と関わることで、思わぬ気づきやリフレッシュが生まれます。
たとえば――
- 趣味のサークルで、年齢も職業もバラバラな人たちと笑い合う
- 行きつけのカフェで、常連さんや店員さんと他愛もない話をする
- SNSで、全然違う分野のコミュニティに参加してみる
- 近所の子どもやペットと遊ぶ
- 美術館やライブ、スポーツ観戦など、普段と違う空間に身を置く
こうした「支援とは関係ないつながり」は、「自分は“支援者”でいる前に、ひとりの単なる人間なんだ」と思い出させてくれます。
他者の価値観や日常に触れることで、視野が広がり、気持ちが軽くなることも多いものです。
「完璧な支援者」じゃなくたっていい
支援の現場では、つい「もっと頑張らなきゃ」「失敗できない」と自分に厳しくなりがちです。
でも、心理学でも「完璧」を目指すより、「十分に良い支援」を目標にする方が、長く続けやすいとされています。
- 自分の限界を知る
- 体調や気分の変化に気づく
- 「今日はここまで」と区切りをつける
こうした自己認識が、持続可能な支援の鍵になります。
「寄り添う人」も、誰かに寄り添ってもらいたい

支援者は、寄り添うことに慣れているからこそ、自分のしんどさに気づきにくいもの。
でも、あなた自身も大切なケアの対象です。
「自分をいたわることは、誰かのためにもなる」――
今日も、ほんの少しだけ自分の心に優しくしてみませんか。
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