「素直なありがとう」を取り戻したい

うちの前に住んでいる、今年、幼稚園の年長さんになった双子の女の子。
タイミングよく会えると、結構お話をするんです。

ある日、二人が可愛いお揃いのカバンを持っていたので、「可愛いカバンだね!お揃いでいいね」と声をかけました。
そうすると、嬉しそうに「そうなんだよー!」と、満面の笑顔で2人でカバンを見せてくれました。
その純真さ、素直さに、思わずこちらも嬉しくなったことがあったんです。

でもちょっと思っちゃったんです。
皆さん、自分が誰かに褒められた時のことを思い出してみてください。
「本当にそう思ってるのかな?」とか「何か裏があるのかも…」なんて考えてしまうことありませんか?

子どもの頃はそんなことなかったのに、大人になるとどうして素直に受け止められなくなるんだろう?なんて、思ったんです。

子どもの素直さの背景にあるもの

子どもって、褒め言葉をそのままストレートに受け取る力がありますよね。
心理学者のハーター(Harter, 2012)によると、子どもの自己概念はまだ柔らかく、周囲からの肯定的な言葉をそのまま信じやすいそうです。

つまり、子どもは自分に対する評価をまだ固定的に捉えていないため、周囲からの肯定的なフィードバックを素直に受け入れやすいのです。
また、発達心理学の観点からも、子どもは大人よりも他者の評価に敏感で、良い言葉をそのまま信じやすい傾向があるとされています。

私が双子ちゃんたちに「可愛いね」と言った時の反応も、まさにそれ。
大人のように「これは本心かな?」なんて考えず、素直に「嬉しい!」と感じられるのは、子どもならではの特権なのかもしれません。

大人が“裏を読む”心理の背景

じゃあ、なぜ大人になると素直になれなくなるのでしょう?

私自身も、褒められるとつい「何か裏があるのかな?」とか「お世辞なんじゃないか」と疑ってしまうことがあります。
これは、社会的比較理論(Festinger, 1954)や防衛的帰属理論(Shaver, 1970)で説明できそうです。

人は他人と自分を比べることで、自分の価値を確かめたり、不安を和らげたりします。

ちょっと前のブログであげた、「自己肯定感」もこの社会的比較理論によって変化しています。
人は自分自身を他人と比較することで、自己肯定感を形成しますが、その比較の「方向性」によって影響が異なってくるというのが社会的比較理論といえます。

”自分より劣ると思える人との比較は、一時的な自信だ”と、↑のブログで書きましたが、それがこの社会的比較理論です。
ただ、この社会的比較理論を提唱したフェスティンガーは「比較はあくまで自己評価の手段であって目的ではない」と言います。

過去の自分との比較や、客観的事実に基づいた評価なんかも組み合わせて、自己評価をどう下すかを決めてるのが自己肯定感ってことですね。

ちょっと話が大逸れちゃったので戻しますね。

大人が言葉の裏を読むのは、傷つかないように「これは本心じゃないかも」と自分を守る“防衛反応”が働いちゃうんでしょうね。
こうした“裏を読む力”は、社会で必死に生き抜いていくうちに自然と身についてしまうものなんだと思います。

でも、それって素直に受け取れない、すれた大人になってしまったってこと。。。?

裏を読む力のプラス面

ただ、“裏を読む力”は、決して悪いことばかりではないです。

相手の気持ちを察したり、場の空気を読む力は、日本の社会ではとても大事ですよね。
私自身も、相手の意図を考えたり、傷つかないように距離を取ることで助かった経験もあります。
大人になって身につくこの力は、社会でうまくやっていくための知恵でもあるんだな、と感じます。

それでも“素直な受け止め方”を残す価値

それでもやっぱり、子どもたちのような素直さは忘れたくないですよね。

心理学者のクリスティン・ネフ(Neff, 2011)が提唱する「セルフ・コンパッション(自分への思いやり)」の考え方に出会ってから、私は「相手の意図よりも、自分がどう受け取りたいか」を意識するようになりました。

褒め言葉や親切を素直に「ありがとう」と受け止めると、心がなんだか軽くなることがあります。
裏を読む自分も認めつつ、たまには子どものようにまっすぐ「ありがとう」と言える自分でありたいな、と思うのです。

素直なありがとうを言ってみよう

子どもの素直さに学びつつ、大人としての洞察力も大切にしながら、「素直なありがとう」を大事にしていけるって素敵だなと思います。

あなたは最近、どんな時に「素直なありがとう」を言えましたか?
もしよかったら、あなたのエピソードも教えてくださいね。

オススメ参考書籍

『セルフ・コンパッション(新訳版)』(クリスティン・ネフ 著)

自分を大切にするということ、ちゃんと自分を労いたいと思う人におすすめの本です。

この記事を書いたのは

植竹 美保
団子の焼ける公認心理師
こころ整備士(認定専門公認心理師)の植竹美保です。
たまに団子屋になりながら、支援者支援をメインに活動しています。

もう疲れた、先に進めない、進みたくない。
そんな風に思ったら、私と一緒にこころを整備してみませんか?
少しでも皆さんの心持ちが軽くなるようなお手伝いができればと思っています。
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