対話がつくる、小さな化学反応

答えが出なくても、いいんです

スマホの画面をタップすると、ふいに現れる一つの問い。

「今日、一番安心したことは?」
「言葉にできない感情を、どう扱う?」

……うーん。

少しだけ?思わず?、言葉に詰まってしまいそうですよね。

私の作った『対話の灯(ともしび)-TOIKAKE』というツールは、そんな風にちょっと「不自由」な問いを投げかけてきます。

私たちはふだん、無意識に「早く、正解を返さなきゃ」というスピード勝負の中で生きています。

「今日のご飯、何がいい?」
「なんでもいいよ」
「じゃあカレーね」

言葉の語尾に、次の言葉が若干重なってくるくらいのスピード。

そんな効率的な会話も時には便利だし必要だけれど。
その速さの中ではこぼれ落ちてしまう、大切な「心の本音」があるような気がするのです。

だから私は、あえて言葉に詰まり、じっと考え込む。
そんな「答えが明確に出ない、ゆったりした時間」を共有できる場をつくりたいと思いました。

大切なのは「最後まで聴き切る」こと

このツール(対話の灯)を使って誰かと話をするとき、とても大切な約束があります。
それが、「相手の話を、最後まで遮らずに聴き切る」ということです。

途中でアドバイスをしたり、「それは違うよ」とジャッジしたりもしません。
相手が一生懸命言葉を探しているときは、急かさずに待つ。
そして、言葉が放たれたあとは、その場に漂っている独特の空気感や余韻を、ただ一緒に味わってみる。

先日、ある方がこんなお話を届けてくれました。

その方は、お子さんの「学校に行きたくない」という言葉に、少し複雑な思いを抱えていました。

「行きたくないなら、行かなくてもいいんだよ」

そう言葉では言いつつも、心の中では「本当は行けるなら行ったほうがいいのに……」と、アクセルとブレーキを同時に踏んでいるような、苦しさがあったそうです。

けれど、この「最後まで聴き切る」対話の場を経験したあと、不思議な変化が起きたと話してくれました。

自分の体調がすぐれない時、お子さんたちに、
「調子が悪いから、少しの間、ご飯は簡単なものでもいいかな?」
と素直に相談した時のこと。

子どもたちはそれを、「いいよ!」とスっと受け入れてくれたそうです。
その瞬間、お子さんの「学校に行きたくない」という言葉も、ジャッジせずにそのまま「そうなんだね」と受け取れる!と腑に落ちたと言います。

対話の場で直接、「不登校」のそのものの話や解決策を話し合ったわけではありません。
ただ、自分の話をそのまま聞いてもらえる体験が、その方の中で、何かをコロリと変えた瞬間だったのかもと感じました。

「場」が変われば、心も動く

私たちの行動や心は、その時その時の「場の空気」に大きく影響を受けます。

例えば、ピリピリした会議室では本音が言えなくても、夕暮れ時の散歩道では、夕陽の光を浴びてポロッと本音が漏れることなんてないですか?

それは、その人の性格が変わったのではなく、「場の空気」が変わったからです。

「正解を言わなきゃ」というプレッシャーのない、安全に聴き切ってもらえる「空気」に身を置くこと。
それだけで、私たちの心はふっと緩み、誰に教わったわけでもなく、自分の中から「新しい一歩」が自然に生まれてくる。

これが、対話がもたらす「小さな化学反応」だと思っています。

あなたの中に灯るもの

『対話の灯-TOIKAKE』は、そんな小さな化学反応を、もっと気軽に体験してほしくて作りました。

無料で公開していて、使い方は自由です。
家族や友人と、あるいは一人でじっくりと。

答えに詰まったら、その「詰まった感じ」を一緒に味わってみてください。
沈黙が怖くなくなったとき、あなたのすぐ隣にある「安心感」がなんなのかを感じられるかもしれません。

このツールが目指しているのは、立派な解決策を見つけることではありません。
ただ、問いかけをきっかけにして、あなたがこれまで歩んできた「自分の人生物語」のほんの一部を、誰かにそっと聴いてもらうこと。

普段の会話では通り過ぎてしまうような、あなたの人生の大切なカケラ。
それを誰かが「そうなんだね」と受け取ってくれたとき、あなたの物語は、これまでとは少しだけ違う、温かな色に染まり始めるはずです。

まずは、扉を叩いてみてください。
そこには、まだ誰にも話したことのない、忘れかけてるかもしれない、あなたの素敵な物語が待っています。

さて、あなたは誰と、どんな場所で「答えのない時間」を過ごしてみたいですか?

この記事を書いたのは

植竹 美保
団子の焼ける公認心理師
こころ整備士(認定専門公認心理師)の植竹美保です 。
たまに団子屋になりながら、「支援のあり方」「個人のあり方」を共に探求する共同研究者として活動しています 。

もう疲れた、先に進めない、進みたくない。
そんな風に思ったら、私と一緒に、その「現実」の読み解き方を研究してみませんか?

一方的に「支える」のではなく、共に問い、背景に光をあて、新しい文脈を共創していく。
あなたのこころ整備を、対等なパートナーとして共に行うことが、私の今のスタイルです。
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