「正義」と聞いて思い浮かべるものは?

「正義」と聞くと、悪者をやっつけるヒーローを思い浮かべたりしませんか?
飛んで、跳ねて、変身して、悪をバッタバッタとやっつける。
「正義」が分かりやすくて、見ていてスカッとしますよね。

でも、現実の世界はそんなにシンプルではありません。
本当に「正義」「正しい」ことって、一つの側面だけで理解できるものなのでしょうか。

ドラマの終盤、心が揺さぶられる瞬間

私がそれを考えているときに思い出したのは、ドラマ『相棒』で、主人公の杉下右京さんが犯人に語りかける一場面です。

「あなたは確かに罪を犯しました。ですが……その裏には、心の底から守りたいものがあったのではありませんか?」

この言葉に追い詰められた犯人が、涙ながらに告白するんです。

「私は…ただ…、あの子を守りたかった!」。
母を恨んでいた子供達が、まさかっ!って愕然とする。

その瞬間、私たちは胸を締め付けられますよね。
「悪党」だと思っていた人にも、確かに“その人なりの正義”があったんだって。
単純な「善」と「悪」では片付けられない、複雑な現実が心に迫ってくるようなドラマのワンシーンです。

正義は、見る人によって色が変わるもの

このドラマのシーン、実は私たちの暮らしにも通じています。

例えば、会社の同期が規則を破ってでも、困っている後輩を助けたとします。
周りから見れば「ルール違反」でも、本人にとっては「仲間を大切にするための正義」なのかもしれません。

心理学でよく言われる内集団バイアスは、こうした感覚と深く関わっています。

私たちは、自分が所属するグループや考え方を「より良い」と感じ、そこから外れる人や意見を「間違っている」と無意識に決めつけがちです。
特にSNSなどでは顕著に見られますよね。
自分と同じ意見を持つ人ばかりを求め、違う意見に対しては攻撃的になる。
「自分の正義が唯一の正解だ」と思い込んでしまうことがあります。

だからこそ、自分の「正義」が唯一の答えではないと知ることが大切なんだと思うんです。
立場や状況によって、見え方は全然違うものだからです。

「社会正義」は、誰かを叩くことじゃない

では、ソーシャルワークなどで使われている、社会正義(social justice)とは何でしょう?

この言葉、社会福祉や教育の分野ではよく使われますが、まだ一般的ではないかもしれません。
語源を辿ると、19世紀のイタリアで「社会の貧困や不正義」を改善するために生まれたと言われています。
その後、社会福祉やソーシャルワークの根幹をなす理念として、世界中に広まりました。

哲学者ジョン・ロールズは、『正義論』で「個人の自由の平等」と「最も不利な人に配慮した問題」を共に大切にすることを説きました。

  • すべての人が基本的な自由を無条件に持つ
  • 社会的・経済的不平等は、最も弱い立場の人々の利益になるよう調整されるべきである

また、哲学者のアマルティア・センも、完璧な理想を追い求めるよりも、現実にある不公平を一つひとつ減らしていくことの大切さを説いています。

社会正義が目指すのは、誰かの「正しさ」を押し付けることではありません。

「誰かを悪者にして倒す」のではなく、誰もが安心して公正に、自分らしくいられる土台をつくることは、とても穏やかで、しかし力強い考え方だと私は感じています。

もし、このテーマに興味を持たれた方がいたら、ぜひ手に取ってほしい本があります。

おすすめの一冊

この本は、個人の心の苦悩をその人だけの問題とせず、社会や文化の文脈で捉え直すという視点を与えてくれます。
心理支援者に向けての本ですが、誰でも陥りやすい不公正について書かれており、対人職の方はもちろん、人間関係に悩んでいらっしゃる方にもおすすめです。
知らず知らずのうちに社会の中の “不公正” を「維持」してしまうことのないように、大切なヒントをくれる一冊です。

誰かのための「正義」から、みんなのための「ちがい」へ

「正義」という言葉は、人と人の対立につながりやすいものです。
自分の「正しさ」と相手の「正しさ」がぶつかり、存在そのものを否定してしまう。
これって、私たちが目指す社会なんでしょうか?

私が活動の根底に置いているのは、「障害者」「健常者」という分け方そのものを手放したい、という思いです。
誰かの「ちがい」を受け入れるという上下の視点ではなく、そもそも「ちがい」を基準にしない関係性の中で、誰もが自然体でいられる社会がいいなと願っています。

正義も同じかもしれません。

相手の「正しさ」を「間違い」だと決めつけるのではなく、「どうしてそう考えるんだろう?」と、その背景にそっと想像力を働かせる
そして、少し立ち止まって、対話を通じてお互いの大切にしているものを理解しようとする。

それが、誰もが安心の中で「自分の正義」を見つけ、「相手の正義」にも敬意を持てる。
そのための、大事な一歩になるのではないかと思うのです。

さて、あなたにとっての「正義」は、どんな言葉に言い換えられそうですか?

この記事を書いたのは

植竹 美保
団子の焼ける公認心理師
こころ整備士(認定専門公認心理師)の植竹美保です。
たまに団子屋になりながら、支援者支援をメインに活動しています。

もう疲れた、先に進めない、進みたくない。
そんな風に思ったら、私と一緒にこころを整備してみませんか?
少しでも皆さんの心持ちが軽くなるようなお手伝いができればと思っています。
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